プログラマーが「『超』入門 失敗の本質」を読んでみた。
2012-05-11
「失敗を解決する技術」「失敗を未然に防ぐ技術」。 最近こういうのにハマってる。
生死を分ける失敗とは
特にこの「「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ」は、日本軍が敗北し、相当な死者を出してしまった出来事として、取り返しのつかないプロジェクトの最たる事例「大東亜戦争」をテーマにしています。
戦争のような、人の生死に関わる部分でどういった要素が失敗を引き寄せてしまうのか、どのような戦略を立てれば失敗が引き起こされなかったのかを、米軍と日本軍の戦略の違いから分析したのが本書です。
計画立案の舞台と実践の舞台の人間的、距離的剥離がいかに的はずれな戦略につながるか、一人のグループリーダーの1つの判断ミスがいかにプロジェクトの崩壊を引き起こすか…。
過去の日本の統率性のなさに幻滅すると同時に、いかに現代の日本が、日本人が同じ病に侵されているか驚かされます。 敗北は必然だったと考えざるを得ません。
現代に生かせるポイント
そして重要なのは、この悲惨な経験を二度と繰り返さないこと。
よく終戦日の訓示など、簡単な挨拶でそのような言葉をお偉方が言う場面がありますが、正直「で…どうすれば良かったの?」と毎回思ってしまいます。
本書はその疑問に明確な答えを提示します。 簡単に紹介すると以下のような感じ。
- 戦略は、指標を定めることに始まり、状況をフィードバックして常に変化させるものだ。
- 正確なフィードバックは戦略立案者も定期的に最前線に赴くことでしか得られない。
- 現場の感情(空気)に惑わされず、定量的なデータによる最悪の事態を想定する。
- 情報伝達の経路においてボトルネック(間違って伝える人間)を排除し正確性を保つ。
- 議論を大勢で行うと、参加意識が希薄になる。
- 研究者(R&D)に十分な責任を与え、イノベーション(革新)の素地を作ることが大事。
- 戦略の変更で、回収不能な投資(サンクコスト)の損得を考えると失敗する。
多くのITプロジェクトの失敗を見てきた私には耳の痛いポイントが並んでます。
1プログラマーとしての会社員時代は上記のポイントを無視した進行が本当に多かった。
私の性格の問題もありますが、大人数になると参加意識が希薄になってくる。
でもこれって今の日本人全体に言えることじゃないか?と思うんですよ。
政治だってそう。 エネルギーのことだってそう。 誰かが変えてくれるだろう、自分が考えても無駄だ、他に頭がいい人いっぱいいるんだから…ねぇ。 そんな話しても周りにウザがられるだけだし…
でもそれって皆が思ってることなんです。 大東亜戦争はそれで失敗したんです。
日本人には取り返しのつかない失敗を学習して克服できる遺伝子が備わってるんです。
というわけで、今の不安定な日本に生きる、すべての国民必読の書としておきます。
2012-05-11