書評:超訳ニーチェの言葉
2010-04-13
こういう本がでない限り、ニーチェなる難解そうな哲学者のことを知らないままで一生を終える人もいるんじゃないでしょうかね?
私もおそらくその一人かも。笑
超訳の利点
ふだん忙しそうなサラリーマンにとって、哲学書を読むなんてことはあんまりないのではないでしょうか?
とにかく時間がない。
分厚い本は見ただけで「ウェッ」となる。
でも気になるんですよね。
一般のビジネス書にもたまに「ニーチェ」の単語が出てきたりしますから。
ニーチェってだれだ?
どんなことをした人?
今の苦しい自分にとって何か救いの手を差し伸べてくれる人?
本書はまさにそういった人向けの「ニーチェ名言集ダイジェスト」です。
ダイジェストなので1日で読めました。
きれい事抜きの「今」を見よう
本書を読んで感じたことは「この人は自分に正直だな~」ということ。
自分を誇張せず、周りに同調ばかりしてストレスだらけの生活を送っている人に「そんなに頑張っても空回りするばっかりだよ」とアドバイスしてくれます。
また「昔は良かった、それに比べて今は…」「将来きっと神様が見ててくれて…」といった現実逃避を止めるように言い、今を大切に見て生きるように促します。
一方で「目の前のことばっかり言うやつは近視眼的だ」「3/4の完成度のほうが案外受け入れられやすいよ」というような事も言っていて、まるで今の論理主義&成果主義が蔓延る疲れた世の中を見透かしているかのようです。
人について
ニーチェは心理学者でもあるのでしょうか? 人に対する洞察の部分では「面白いな~」と思う箇所がけっこうありました。
たとえば、
おおかたの人間は、自分に甘く、他人に厳しい。 どうしてそうなるかというと、自分を見るときにはあまりに近くの距離から自分を見ているからだ。 そして、他人を見るときは、あまりにも遠くの距離から輪郭をぼんやりと見ているからなのだ。
確かに…自分はこれだけやるのにこれだけ苦労した、ストレスがあったということを実感していますが、他人のそれは分からないですよね。
ニーチェは「自分以外のこともそうやって見るように」という非常に愛情深いアドバイスもしてくれます。
また、他人には自分のそういう細かいところが見えてないというのもポイントですね。
ニーチェの入り口
正直、名の知れた哲学者だけに、お堅いことがずらずら並んでいるのかと身構えて読んだのですが、逆に技術書やビジネス書ばっかり読んできた私にとっては一服の清涼剤のような読後感でした。
こうやって哲学の敷居を下げてくれると「哲学」という言葉に「難しいから読まない」という先入観を持って拒絶してしまう我々のような人たちにはとてもありがたいです。
この本から始めてニーチェが好きになる人もいるでしょうしね。
「バルタザール・グラシアンの 賢人の知恵」や「中国古典の知恵に学ぶ 菜根譚」同様、このシリーズの本の特徴ですが、1日のスタートに朝パッと開いてそこに書いてあることを実行すると良い習慣になるのではないかと思います。
終わりに
しかしニーチェを詳しく調べてみると、持病を患っていたり、(偉人によくあることですが)精神がおかしくなったり、晩年は妹に都合よく利用されたりと、けっこう不遇な人生を送っていた人なんですよねー。
この辺りは本書には出てこないのですが、なぜそのような人に真理に迫る洞察ができたのか、より詳しい書籍を読んでみたくなる一冊です。
2010-04-13