ピアノの上達=脳を理解すること。「ピアニストの脳を科学する」

2012-06-26

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医学博士でもあり、ピアノプレーヤーでもある著者(古屋晋一博士)による、ピアノ演奏と脳との関連を詳しく解説した本「ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム」。

初見演奏がなぜできるのか?

brain-of-pianist-first-play.jpgショパンのバラード1番で挫折した素人の私にとって、また、楽譜を暗譜で覚えて曲のレパートリーが全然増えなかった私にとって「初見演奏」は夢の様なスキル。

なんとなく「とにかく楽譜を見ながら練習あるのみでしょ」と思っていた私にとって、本書は「いや、固視で一点を見つつ、周辺視で音の塊を認識して、高速移動(サッケード)で飛ばし読みしながら弾いていくんだよ。 なぜなら…」というように、脳科学的に解説してくれます。

まさに衝撃。 こういった脳の特性を知って練習するのと、知らないまま練習するのとではおそらくピアノ練習の成果に天と地ほどの差がつくのではないかと思います。

また、本書は日本人はもとより、海外の演奏家も含めた多くの科学的な実験によって、個人でどれくらいの差が表れるのかという点も含めて記述してあるのが良いです。

なぜなら、こういったテクニックは個人差というものがあり、誰でも同じ練習量で一定のスキルに到達するというものではないからです。

練習しすぎによるトラブルを回避するために

著者の古屋晋一博士は「音楽演奏科学者」という珍しい肩書きを持っています。

これは、音楽を学ぶ人がトラブルに悩まされることが多いという現状をみて、医学・科学的な視点から正しい演奏方法や学習方法を学べるような研究を、ということで立ち上げられたそうです。 素晴らしい方向性です。

確かに何も分からない状態で練習を始めると「練習時間は長ければ良い、とにかく練習あるのみ」と思ってしまいがちですよね。 そうやって学ばせている先生、親はいませんか?

でも、実際そうやって音楽の知識と経験則のみで練習していると「腱鞘炎」「手根管症候群」「フォーカルジストニア」といった恐ろしい病気が口を空けて待っています。 根性でどうなるものでもありません。

自分が出来たから生徒にもできるはずだとか、自分の息子・娘だから出来るはずだとか、そういった思い込みがどんどん病気を悪化させていきます。

本書では、長時間演奏にも耐えられる「脱力」の科学的な分析や、適切な練習量、時間なども多くの実験で明らかにされてきています。 まさに省エネで健康的かつ効率的にピアノを学ぶための最適な本と言えます。

ピアノが好きな全ての人にオススメです。

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2012-06-26