企業のクラウド上にプライバシー・データを預けないという選択
2012-02-01
巷には「人気のクラウド※とスマートフォンを活用して賢く生きよう!」といった類のライフハック本が溢れていますが、その考え方を180°変える時がまもなくやってくるかもしれません。
※クラウド:インターネット上のデータ保存領域にデータを預け、どこからでも読み書きすることができるサービス。 詳しい解説は「クラウドコンピューティング」を参照。
Googleは2012年3月1日から、Googleサービス利用者のデータを収集してGoogle上で統合するという発表を行いましたが、このデータ収集内容が個人のプライバシー情報にまで踏み込んでいるのではないか?と、Androidスマートフォン利用者やGmail等のGoogleサービス利用者が警戒感を示しています。
個人をなるべく特定したいGoogle
Googleはこれまで個人のプライバシーを尊重するあまり、Facebookよりも個人を推測しにくいデータしか収集しておらず、広告出稿の精度がそれほど高くないのが悩みの種でした。
そこでGoogleが始めたSNSサービスが「Google+」ですが、このGoogle+に情報を集約させるためにスマートフォンユーザーの利用状況や全国の無線アクセスポイントの位置情報を収集することにしました。
その人自身は特定できなくても、その人の位置や行動など、公開されていて集められるデータなら何でも集め、なるべくその人の個性を推測しようというわけです。
無線アクセスポイント位置を収集されると、利用者が3G電話回線やGPSを切っていても大体の位置特定が可能です。
企業は利益が脅かされるとプライバシーを軽視する
よく考えると当たり前のことですが、Googleは営利企業です。 利益が出なければ潰れてしまうわけですから、法に触れない限り、利益を出すことが何よりも優先されます。
Googleのような広告配信企業が利益を出すには資産であるデータをなるべく活用して収益を得ようとするのは当然の流れでしょう。 そして、ライバル企業(Facebook)にその収益源を脅かされれば、データの収集方法や活用方法も強引になり倫理性にも歪みが出てきます。
今回の件は、その歪みが露呈してきた結果と言えます。
このことはGoogleだけに言えることではありません。 Google以外のクラウドデータ管理企業でも恐らく同じことです。
クラウド攻撃による情報漏えいのリスク
そしてもう一つ。 それだけ貴重なデータが詰まったインターネット上のサービスを狙ったクラッカー等による攻撃のリスクもあります。
クラウドサービスを運用している国に敵対している国があれば、あらゆる手段、それこそ国によっては法に触れるような方法を使ってでも攻撃をしてきます。
クラウド障害によるデータ消失のリスク
2012年6月、大手ホスティング会社であるファーストサーバーにおいて、管理ツールの不具合によりサーバー上のデータが消失し、復旧できなくなるという大事故が起きました。
メールデータやECサイトの顧客データ等のバックアップデータを取っていなかった企業や個人に大損害を起こし、あらためてブラックボックス化された運用体制の下に貴重なデータを預けるということのリスクを再認識させられました。
パーソナルクラウドを1人1人が持つ時代に
さて、企業が提供するクラウドサービスの危うさを語ってきましたが今のところ「すぐに使うな」とは単純に言えない状況にあります。
サービスの機能自体はすばらしいもので簡単に否定できるものではありませんし、現に私もGmailやiCloud、DropBox、Evernoteなどのサービスにはお世話になってます。
一方で、今回の件で「預けすぎるのも考えものだ」と思ってしまったのは事実です。 同じように考えている人もいらっしゃるでしょう。 私は個人的に、データはやはり「パーソナルなもの」と「企業に預けるもの」とでクラウドサービスのタイプを分けるべきだと思っています。
ちょうど最近新製品が日本でも発売されたPogoPlug mobileを使うと、自宅のネットワーク内にクラウドを作って、専用のアプリ(PC、スマートフォン用)で管理することができます。
また、自社サーバーにインストールするタイプの「owncloud」といった注目の技術も登場してきています。
こういったパーソナルなクラウドにまずメールデータや仕事のデータを預け、企業のクラウドには公開されても構わない共有ファイル等を預けるようにします。
自分でプライバシー情報のコントロール権限を持つことになるので、使い分けによる少々の不便さを考慮しても採用すべきではないでしょうか。
ただ、企業クラウドサービスに比べてパーソナルクラウドの分野はサービス品質の点で出遅れているので、早急に改善を進めてほしいです。 この点においては、やっぱり企業のお世話になることになるのですけど。
2012-02-01